【改装中】切符、食、時々長旅。@はてな

切符レポや旅行記を中心とした、切符、食、時々長旅。(http://arthur8.yamagomori.com/)のサブページ的ブログ。更新再開に向け改装中。

きっぷ収集歴10年

ブログの更新が滞っているところ恐縮であるが、約10ヶ月ぶりにちょっとした思い出・振り返り記事を投稿させてもらう。というのも今日、HDD内で10年前の画像を漁っていて気づいたこと・思い出したことがあるのだ。


1. 2008年8月4日

2008(平成20)年8月、筆者は所用があり十数年ぶりに関東を訪れていた。
まさにちょうど10年前の2008年8月4日午後、その日の用事をこなし、都内でちょっとした時間が確保できた。その際に都電や地下鉄で乗り鉄をした記憶があり、当ブログ内にも旧ブログから引き継いだ記事が残っている(ぶらり東京鉄道(乗車し続け)ひとり旅2008)。

実はこの乗り鉄、人生初の『乗車だけを目的にした』鉄道乗車であった。
大都市の風景に目を見張る、前払いの運賃箱システムに驚く、路線や車両、きっぷに関する知識の無さを露呈している(現在の筆者でも十分な知識があるとは言えないが、当時は鉄道に関する知識がほぼ皆無であった)など、10年後の今から見ると我ながら微笑ましい乗り鉄日記になっている。

さて、その過程で、筆者はとある行動を取っていた。
JR王子駅130円区間(券売機券)
実使用しないきっぷの購入』である。

当時の記事を見るに、東池袋→王子→後楽園→銀座→赤坂見附→(改札内乗換)→永田町→東池袋の経路で乗り鉄していた。
当初、東池袋駅からの乗車時に入場券を買い求めようとするも、発売していないことに気づき、最安区間きっぷ購入もやめて都電に乗り込んだようだ。次に下車した王子駅にて購入したのが、上の画像にあるJR王子駅130円区間の券売機券(いわゆるエドモンソン券)と、下の画像にある東京メトロ王子駅160円区間の券売機券であった。
東京メトロ王子駅160円区間(券売機券)

2. きっぷ購入のきっかけ

筆者が何故そもそもきっぷを買い求めようとしたのか。思い返してみると理由が2つあった。

1つ目は『きっぷの地紋が各社によって違い、JR各社でも違いがある』との話を聞いたので確かめたかったため。当時は割と気になっていた点であるが、今はあまり重視していない。

2つ目は、『場所を訪れた証拠となる何か』を、携帯電話の画像データといったものではない『その場でしか手に入れられない、手元に残る何か』を求めようとしたためだ。
携帯電話で撮影した画像には日時やGPSデータが残るかもしれない。しかしそれはあくまでデータである。撮影に費用がかからず印刷は出来るが、複製が簡単であるし、手にとって確認できる何かではないのだ。
きっぷ、特に日時と発券箇所が記された、駅の端末や券売機で発券された入場券であれば、その駅に出向かなければまず購入できない。お金が掛かるといっても、たかだか100~200円のものである。ジュース1本買うような金額で、そこへ出向いた証明が手に入るのだ。

それは当時の筆者にとって重要な違いであった。
もちろん今もこの考えは基本的に変わっていない。筆者のきっぷ収集方針の1つに『当該駅でのみ発売可能なきっぷを収集するようにする』があるが、これは『証明』としてのわかり易さを重視したためである。
要は筆者にとって入場券をはじめとしたきっぷは『安価な訪問証明書』だったのだ。

3. 筆者の10年間

入場券をメインにしたきっぷ収集趣味はここから始まった。

2010年頃までは頭の片隅に収集を趣味としようとする意志があったものの、当時の環境からなかなか手を出せないでいた。本格的に趣味として始めるようになったのは2010年代に入ってからである。

2010年代に入り、各地で『旅行』と称して乗り鉄やドライブを行うようになった。
最初は出向いた先にあった駅や、初めて訪問する鉄道会社の駅の最安区間の券売機券を求めるだけであったが、いつの間にか収集方針に『恒常的に発売されている/日常的に用いられているきっぷを収集するようにする』が加わった。これによってだんだんと収集をメインとして出向くようになり、収集対象もマルス券と券売機券双方の入場券へと変化していき、収集枚数も増えた。

ちなみにこの方針は、きっぷ収集趣味を始める以前に行っていた国内・国外のコイン収集の考えを引き継いだのではないか、という気がしている。
日常的に用いられているものというのは実使用されることが多く、未使用の状態で残りづらいことがある。そういったものをできるだけ手元に残したいのだ。地元以外の地域では記念券よりも端末券や券売機券、常備券といったものを優先するようにしているが、これもこの考えから来ているのだと思う。

そして『データではない証明書』として収集し始めたきっぷであったが、磁気券の印字消滅という問題はどうしても避けられず、結局スキャナーで画像データ化するようになった(とは言うものの、今日撮影した上記のJR王子駅130円区間乗車券を見れば分かるように、10年経っても印字が綺麗なままである券も多い)。
また、収集枚数が増えたために画像データ編集に手間取ることも増えた。実は未だに収集きっぷの全てをHPに掲載出来ていない。この辺りは今後の課題であろう。

このように10年間で、旅のついでに駅へ立ち寄った際に購入する『証明』スタイルから、駅に立ち寄り購入することを主眼において旅をする『蒐集』スタイルへと変化してきた。

この趣味は基本的な部分は変わらず10年続けてきたが、2018年現在は2010年代前半ほど熱心に各地へ出向けておらず、収集頻度は明らかに低下している。この先も可処分時間によってスタイルが再び『証明』へと戻る可能性も大いに有り得るだろう。
しかし、いかなるスタイルになろうともこれからもこの趣味は続けていくだろうし、最低でもJRの全駅分収集し終えるまでは止める気は無い。もし収集が止まることがあるとすれば、それは筆者自身が各地へ出向くことができる健康状態を維持できなくなった時ではないかと思う。

4. 実用的観点におけるきっぷの10年間

この10年できっぷを取り巻く環境は少しずつであるが大きく変わった。

2001年のSuica導入から始まったJR・大手私鉄交通系ICカードは、今や交通系ICカード全国相互利用サービスという形で共通利用がなされている。利用可能路線も大都市圏からその辺縁へ伸びるローカル線にまで広がっており、各地の中小私鉄やバス路線でもICカード化が進行してきた。
都市交通の用途に留まらず、ICカード利用は都市間鉄道にまで広がっている。JR東日本では新幹線自由席にも乗車可能になっており、東海道新幹線でもICカードと購入済みきっぷデータを紐付けて乗車できるようになった。

JRにおいて、都市部では指定席券売機への移行により、地方部では利用者減により、双方共窓口の閉鎖がじわじわ進行している。指定席券売機では証明書が必要なきっぷが購入できない、窓口が閉鎖された地方部では最寄りの有人駅に出向く必要があるといった不便さが生じてはいるものの、人手不足による自動化促進と過疎化に伴う利用者減の中、この流れは着実に進むと思われる。

各社ではインターネット予約(えきねっとエクスプレス予約・e5489等)が広がってきたが、利用可能エリアの違いといった『痒い所に手が届かない』不便さから批判に遭いつつ、着実に便利な方向へ向かっているように思える。

5. 趣味的観点におけるきっぷの10年間

趣味的観点でも様々な変化があった。

上でも述べたICカードの普及と並行して、都市部の連絡運輸はだんだんと縮小されてきた。乗り入れ先1駅までといった『申し訳程度』にまで都市部における磁気券での連絡乗車券が縮小してしまったところも多い。北九州モノレール沖縄都市モノレールといったように、ICカードの導入・普及と同時に磁気券を廃止し、航空券のようなQRコードのきっぷを導入するといった新たな動きも見られた。

路線開業や事業者移管により、制度や発売可能範囲などに変化があった。
新幹線開業に伴う並行在来線開業によって、連絡運輸範囲に変更があったり、青春18きっぷといった普通列車限定企画乗車券のルールにも変化が加えられたことは話題になった。

窓口閉鎖については上で述べた通りであり、端末で入場券を購入できない駅も増えているが、常備券など、手売りのきっぷの発売箇所もゆるやかに減少している。
道内で発売されていたJR最後の硬券乗車券も消滅した。JRからの委託駅における手売りきっぷも端末導入で縮小される地域がある中、道内では窓口閉鎖後に簡易委託駅として手売り化されるなど、地域により先行きに差がある状況である。
しかしながら、上で述べた通り、きっぷを売る駅が減少していく流れは確実と思われるため、手売り化で生き残った発券箇所も予断を許さないだろう。

券面表示のネタとしてであるが、間もなく平成が終わろうとしている2018年現在、私鉄各社から始まった磁気券面の西暦表示(上に掲載した東京メトロのきっぷは和暦表示だが、この数年後、2011年には既に西暦表示となっている)は、遂にJR各社にまで及んだ。和暦表記が磁気券から消滅するのは時間の問題かもしれない。

6. 最後に

さて、初の乗り鉄・きっぷ収集鉄となったあの日からこれまでの10年を、筆者の思い出ときっぷの変化について記すことで振り返った。

これからの10年、そしてさらに未来では、紙のきっぷはどうなっているのだろうか。筆者の個人的な予想としては、航空券や高速バス乗車券のように電子化が進み、実物としてのきっぷは消滅する方向へ向かっていくのだろう。
それでも、実物の『きっぷ』が消滅する最後の日を是非ともこの目で見届けたいものである。

そして、その『最後の日』よりも早く、できるだけ多くのきっぷを収集することを目標に趣味を続けていきたいな、と思う。